【一鶴にあらずんば骨付き鳥にあらず?】

  1. 一鶴


香川県丸亀市にある骨付き鳥「一鶴」で久しぶりに骨付き鳥を食べてきました。本店は駐車場がないので、いつも土器川店です。

香川県では「骨付き鳥」とは一鶴のことだった

私の知っている香川県出身者は口を揃えて同じようなことを言います。

「一鶴にあらずんば骨付き鳥にあらず」と。

香川県で生まれ育った方々にとって、そもそも「骨付き鳥」という言葉は「一鶴」だけを指す言葉だったそうです。

なぜなら、「骨付き鳥」という言葉より先に一鶴が存在しており、一鶴の美味しさが世に広まる過程でこの

ジューシーで皮パリパリで怒濤のスパイシーさを誇る独特の美味しさを説明するために骨付き鳥という言葉も使われ、一緒に広まったからだそうです。

つまり、料理としての「骨付き鳥」という言葉は一鶴が作り上げたものであり、一鶴が世に広めたということです。

調べてみると確かに、骨付き鳥は1953年に一鶴の創業者が考案していました。

香川県出身者にとって、この一鶴以外も骨付き鳥を名乗るようになった現状に違和感があると言っていました。

特に、雑誌や書籍で香川県の観光特集が組まれ、名物として骨付き鳥も取り扱われている場合に、なぜか一鶴の名前が出てこないことがあり、失笑するそうです。「なんでこんな会社が一鶴をさしおいて…?」と。

観光特集はあくまで香川県の外にいる人間に対しての特集なので、地元の人間からすると違和感があるケースは決して珍しくないとは思いますが、それにしてもなぜこのような状況になったのでしょうか。

また、ほんの数年前まで実際にあった話ですが、一鶴とは何の関係もない香川県の会社が強靱なSEO対策を施してGoogleやYahoo検索の「骨付き鳥」で1位を獲得していました。

当時テレビで一鶴が特集されたことが何度かあり、この検索1位の通販サイトを一鶴と勘違いして利用してしまった人間が私の周囲にもいました。香川県出身者曰くところの「一鶴とは似ても似つかぬ味」のこの骨付き鳥を購入してしまった人には、是非もう一度

一鶴を買い直してもらいたいとのことです。

なぜ一鶴以外も骨付き鳥に参入するようになったのか

一鶴が存在する丸亀市が観光政策の一環として骨付き鳥のPRを積極的に推し進めたことが主な要因だと見られています。

「うどん県。それだけじゃない香川県」

このキャッチフレーズ以降、香川県の観光産業がさらに盛り上がったそうですが、当然うどん以外の名物も大々的に宣伝していこうとなります。

しかし、まさか行政として一鶴だけを薦めるわけにもいかないので、類似品を出していた企業もひっくるめて丸亀市の名物「骨付き鳥」として推してしまおうということで、これは行政の姿勢としては至極真っ当です。潜在的なマーケットの厚みと広がりを見込めばこのように切り替えたほうが良いでしょう。

こういう事情を知った上で丸亀市の骨付き鳥PRページを読むと面白いです。うどんと違って丸亀市に昔から骨付き鳥を提供するお店がたくさんあったなどとは実は一言も書かれていませんし、骨付き鳥の発祥や歴史についての説明は、すべて一鶴だけのことだとわかります。

実食

それはさておき、実食です。

メニューでまず

「おやどり(通称「おや」)」か「ひなどり(通称「ひな」)を選びますが、やっぱり「おや」です!

もちろんひなも美味しいですが、ジューシーで皮パリパリで果てしなくスパイシーな一鶴らしさを真っ正面から体験したいなら、やっぱりおやです!

運ばれてくるときはこのように

皮のほうが下になって出てきますので、そのまま口に運んで皮のパリパリ感を舌の上で楽しみながら味わっても良いですし、

ひっくり返して(ちょっと失敗…)これから舌の上で味わうことになる皮をまず目で見て楽しむのも良しです。

そして、一鶴自身も

説明してくれていますが、とりに付いてくるキャベツや

サイドメニューにある「むすび」を、肉汁がたっぷりにじみ出たタレに漬けて食べると、これがまた凄く美味しいのです。

食べるのに夢中になってキャベツのほうの写真を撮り忘れてしまいましたが、むすびのほうは

このような感じになります。

「えっ、おむすびを脂に漬けて何やってるの!?」と思われるかもしれませんが、これが本当に美味しくてたまらないんですよ。しかも、どう見ても脂に見えるタレなのに全然胃にもたれないですし、実際のところこのタレに脂はほとんど含まれていないのではとすら思ってしまいます。

その他、サイドメニューでは

月見とろろや

サラダ、そしてもちろんビールもよく注文されるようです。

また、料理が料理ゆえに手にタレが付いてしまうことがありますが、

新しいお手ふきを持ってきてくれるので心配無用です。

総括

私としては、観光産業として盛り上がっているところに「一鶴にあらずんば骨付き鳥にあらず」などと言い切ることはできませんが、それでも「一鶴を食べずして骨付き鳥を語るなかれ」くらいは言いたくなるような、そんな独自の世界観すら感じさせてくれる一鶴です。

おそらく、一鶴を食べずに骨付き鳥を語ることは、讃岐うどんを食べずにうどんを語るようなものです。

ちなみに、ニンニクも強烈に効いているスパイシーさなので、翌日に大切な用事がある紳士淑女の方はご注意ください。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。